夕方 オチヨさんの家に用事があって行った。
95歳か96歳か
家事をこなし 朝食の用意をし
冬以外は自分用の畑で野菜を作り
春には山で蕨を山ほど採り
人生で8回 新鮮なマムシの心臓を食べ
それで元気なのだという
あの オチヨさんだ。
ガラガラと 土間の引き戸を開けると
オチヨさんは 薪で風呂を焚いていた。
用事を済ませ 外に出て
私の車まで歩いた。
杉の人工林を背に オチヨさんの家はある。
すでに 家は山陰に入り
溶けた雪の上を歩くと バリバリと音がした。
あの 大きな家で生まれ
95年間 同じ景色を見
野菜や米を作り
寺や神社の行事をこなし
季節と共に生きてきた。
車のウィンドウから見た
雪の中のオチヨさんの家は
深い山の風景と同化している様に見えた。
私の住む集落より一つ北の村。
細い川沿いの雪道を ゆっくりと車を走らせ
峠を越えて帰ってきた。