懐かしい花森安治のフリーハンドの字。
私の20代の頃から ずっと家にあった。
地味な織の写真の ハードカバーの装丁。
中に紹介されている 201ものお惣菜も
地味な 当時の母の味。
「大根ととりだんごの煮込み」
「イカと竹輪の油炒め」
若い私には なんとも魅力のない料理本だった。
そんな私が 数日前に
ぱらりとめくったページに載っていた文。
『「なすとかぼちゃのいため煮」
なすとかぼちゃを油でいため
とろけるほどに煮ました。
なんでもないおかずですが
こういうものが一つあると
食卓がおちつくものです。』
なんでもないが 食卓が落ち着くおかず。
この本が出版された半世紀前
電子レンジもなく 出汁も昆布や鰹節で。
家にいる「母さん」が 食事の支度に
十分に時間をかけていた時代だ。
今日 私は
「なすとかぼちゃの炒め煮」を作った。
電子レンジでチンしたカボチャと
乱切りにしたナスを炒め
粉末出汁を使い 砂糖を使わず
醤油だけで美味しく炊いた。
半世紀前の料理本は 基本を教え
私はそれをアレンジしながら
「食卓が落ち着くおかず」を作る。
この本を大事にしたい。