若き藤原新也が 好奇心と感動で 書き綴った
「印度放浪」「西藏放浪」「全東洋街道」
インド チベット ユーラシアを
たった一つのカメラで 大きな空や岩山
その地に暮らす人達 喧騒を撮った。
放浪三部作(私が勝手にそうよぶ)の後
写真集 紀行文などを書いたが
それらは精細に欠け 先生から出された宿題を
淡々と片付けた感があった。
そして
50になる前 生まれ故郷 門司が舞台の
「少年の海」を刊行した。
表紙の写真の後ろ姿の男の子は
藤原新也の5歳の頃を彷彿とさせるに充分だ。
戦後の混沌とした時代に
厳しい人生を背負った人達が集う
父が営む旅館で育った。
門司を写真に撮りながら
人生の大半を東京で生きた藤原新也は
自分のアイデンティティーは
嬉しくも 悲しくも門司なのだと気づくのだ。
藤原新也の膨大な著作の中で
たった一つのマスターピースは?と聞かれたら
迷わずこの本をあげるだろう。
仕事場の作業台の前の棚。
そこにある本の中から
久しぶりにページをめくったこの本。
やっぱり 又 ジーンとした。