車でどんどんと 集落の細い急な道を上る。
写真集や ポスターで
格好の被写体になる 棚田へと出かけた。
車から降りて これがそれか?と見る棚田は
全くの「素」の顔をして
明るい陽の光の下に広がっていた。
山の中腹のこの村は
家も 畑も 田んぼも
全部 段々の上にある。
この村を造り上げた 先祖の努力を思う。
ここでも 軽トラは「公用車」
下からエンジン音をたて
帰ってきた女性から 棚田味噌を買う。
木に彫られた「棚田味噌 売ります」
の看板に惹かれてだ。
「この山道を行けば 車で15分で着くよ」
と 笑いながら 私の住んでいる山向こうの村を指す。
「崖がきついし 崩れた石があるかもしれない」
とも言う。
用事で出かけて来た場所に早く着き過ぎ
時間潰しにやって来た棚田の村。
連なる山の上に流れる雲
青い空に輝く陽の光
刈り入れの終わった田んぼ
盛りの過ぎようとしている彼岸花
可愛いお地蔵さん
畑に植わった若い大根葉。
何もかもが長閑である。
雨の日なら 印象は違ったはずだ。
同じ市に在る 話に聞いていた棚田の村。
ふと思いついて 上って来た初めての場所。
遠い所に旅した気分だ。