雨粒をたっぷりと溜めた
薄紫の花びらに
顔を近づけて見る。
離れて見る花と 違った顔をして
こちらを見返す。
小さい蜘蛛が
葉と花の間に張った
見えない程の糸をつたい
慌てて右往左往する。
その糸にも 細かな雨粒。
シオンの根本の土の上を
蟻が無心に足早に歩く。
ファーブルは虫を見つめ続け
イソップは虫や動物の姿を借り
人間を語った。
そして 私は
何十年もの時を 一気に遡る。
虫の動きや花の様子に
子供時代に読んだ
イソップやファーブルを
面白く思い出した。