姿は見えないのに
どこからか香ってくる。
甘い濃密な香り。
9月の終わりに
きちんと律儀に咲いてくれる。
どこに咲いているのかと
香りを辿って行くと・・・
「あった!」
ケンジさんの庭の入り口に
満身創痍の姿で立っていた。
雪の重みと
台風の強い風で
立派だった枝が
その面影も残さず
しかし
オレンジの小さな花を
沢山付けて
馬酔木の横に
ひっそりと立っていた。
こんなに甘い香りを
振りまいているのに
隠れていたって すぐに見つかるよ。
「ああ いい匂いだ」
胸にいっぱい吸い込んで
秋の到来を喜ぼう。