「汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる」
汚れ始めた周りの雪は
今日降った雪で
それは美しい白の世界に戻った。
中原中也の
「汚れっちまった悲しみ」
を思い出すには充分だ。
「汚れっちまった悲しみ」を
「私」に置き換えれば
全く違った詩の世界に変わる。
それはただの雪の日の描写だ。
そんな事を思いながら
足跡のない雪道を
靴跡を付けながら歩いた。
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汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる
汚れっちまった悲しみは
たとえば狐の革裘(かわごろも)
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる
汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢(ゆめ)む
汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……
中原中也「山羊の歌」から
「汚れっちまった悲しみは」