集落のどこの家でも
山から引かれた豊かな冷たい水が
パイプからほとばしり出ている。
それで野菜を洗ったり
鯉を飼っていたりする。
うちではこんな便利なものは無い。
雨の降らない日々が数日続く。
パイプからの水は止まり
トミコさんの池の中の鯉は
心無しか苦しそうだ。
透明な冷たい水が
いつも流れている溝も
枯れている。
「ああ、雨が降って欲しいな」
明日から台風だ。
又、恐ろしい程の雨が降り
草木をへし折る風が吹くのだろう。
風でへし折られる前にと
トミコさんが採ったミニトマト。
「傷物やけど持って帰る?」
濃いトマトの味と弾ける皮。
おやつに食べた。