御年80才のタイチさんは
それはそれは綺麗好きだ。
家の前の広い野原。
ススキの葉の背が高くなると
それが気になって仕方がないようだ。
毎年の夏
かんかん照りの下
草刈り機でススキの葉を刈り始める。
キーンキーンと刃が石に当たる音。
熱中症で倒れるのではないか?
私の心配をよそにその作業は続く。
今年の夏は暑かった。
さすがに草刈りの気力が失せたのか?
広い原っぱにススキの穂がそよぐ。
若い穂は赤い銅の色。
風が吹くと綿毛が飛ぶ。
先が尖った葉の間に
ピンクや黄色の花が咲く。
夏は行ってしまったのに
鳴いている蝉。
「タイチさん
これでいいんじゃないの?」