ショータさんは90才。
10年程前まで
山仕事を生業としていた。
木を切ったり植えたり
楢の木で炭焼をしたり
栗の木で鉄道の枕木を作ったり。
夏に切った杉や檜を
雪の上を滑らして運んだり
木馬道(きんまみち)を
まるでジェットコースターの様に
木に股がり滑り降りたりしていた。
8年程前に
ショータさんがチェーンソーをあげると言った。
大きなのと小さいのと。
小さいのはチャックの所に行った。
メンテナンスをしなければと思いつつ
薪小屋の隅に置いたまま
8年程が過ぎた。
山仕事をしている「弟君」
そのショータさんのチェーンソーを
メンテナンスをして一昨日持って来た。
重い重い大きなチェーンソー。
こんな重いのを担いで山に登り
ショータさんは仕事をしていたんだな。
力強いエンジン音で
赤い重いチェーンソーが唸る。
太い木も簡単に切って行く。
今2代目の夫の白いチェーンソーが
まるで弟子の様に従っている様。
「講釈を言うのにはまだまだやど」と
ショータさんのチェーンソーは言う。