もう一つのお墓参り

お墓から見える村
お墓から見える村

岡山駅で伯備線に乗り換え、「清音(きよね)」という駅で今度は井原鉄道に乗り換え、「矢掛(やかげ)」という町で降りる。そしてここから4キロ程の所に、私が生まれて3、4才まで育ち、両親の墓がある江良(えら)という村がある。

 

9月の終わり、暑い暑い日に年に一度のお墓参りに行ってきた。

 

小高い丘の上にある墓地の墓石は全て姓が同じ。私の先祖の江戸時代中期の墓もある。

これらの墓に花やシキビを生けて線香に火をつける。

 

そして、ここから安倍山が見える。村の人達にはなじみの山だ。

この麓で安倍晴明が生まれた。生家があり、安倍神社もあり、お祭りがある。

親戚に「大阪にも生地があるし、京都にも安倍晴明神社がある」と言うと、誇らしげに「ここが本物だ」と言う。

 

 

宿場町「矢掛」の店
宿場町「矢掛」の店

山陽道の宿場町「矢掛」。

ここが村のミッドタウン。何でも揃っている。役場、銀行、学校、郵便局、ホームセンター、AEON系列のスーパー、コンビニ、商店等々。

 

20年程前から、この町の村おこしが始まった。

橋本龍太郎の政治力で井原鉄道が開通し、多分、これを機に始まった村おこし運動。

 

まず、古い町並みの保存。交通の不便さが幸いしたのか、町が急に近代化へと進まなかった。

篤姫が江戸に輿入れの時に泊った本陣。そして脇本陣、古い商家、醤油屋、◯◯家など、見事に昔のまま残されている。

努力して残したというより、変える必要がなかったのではないか。

 

矢掛特有の屋根瓦
矢掛特有の屋根瓦

美星町に有名な天文台があるが、今、この町は「宿場町」での村おこしに一生懸命だというのがよく分かる。

 

お祭りは大名行列。改築中の家も、公の建物も江戸時代そのままに。今、建築中の温泉付き宿泊施設も江戸時代風。交流館も江戸時代風。

がんばっている「矢掛」。しかし私から見ると、何とものんびりと、欲の無い町おこしの様に見える。

 

井原鉄道のそれぞれのプラットホームにたっている町の名所案内を見ていると、思わず笑えて来る。

 

「川辺宿(かわべじゅく)駅」は、その案内板に、金田一耕助のむさくるしい帽子にはかま姿が描かれており、ここは溝口正史の小説の舞台なのか?と思う。

 

又、「吉備真備(きびのまきび)駅」は駅前に赤と緑の中国風の建物まで。そして、山側の吉備真備公園には見上げるような吉備真備像が立っている。こんな温暖なのんびりした村から、吉備真備は巣立ったんだな。

「どうだ!、うちの吉備真備は!」という、町の人の自慢を体現した様に立っている像を見た後で、公園内の手打ちうどんを食される事をお勧めする。

 

一生懸命がんばってはいるけれど、しかし、岡山弁のあの間延びしたイントネーションみたいに、のんびりと村おこしをしている町だ。