朋あり、遠方より来る・・・

「朋あり、遠方より来る、また楽しからずや」

 

青森の友達と35年振りの再会だった。

「人生のリセットをしに奈良に仏像でも見に行きます」と言うメールが届いて、その1週間位後にうちのドアの前に奈良漬のお土産を手に現れた。私は心の中で「クスクス」と笑った。友達はきっと奈良漬、それも箱に入ったのをお土産に持って来るだろうと思っていたからだ。毎年、律儀に送られて来るりんごといい、箱入りの奈良漬といい、そういう人なのだ。

 

若い頃、ニット帽にワークシャツ、ジーンズにいかついワークシューズを履いてデイパックを背負っていたアラスカの木こりのような大男の友達は、粗い織りの生地のジャケットを着、首に薄手の黒のスカーフを巻き、デイパックならぬカート付きの旅行カバンを引いていた。

変化といえばそれ位。話し出すと35年のブランクは一気に飛び越えた。

口のあたりに拳を丸めて「僕はね、コーヒーを飲むと屁をこくんですよ」と言っていた若い頃。じゃあ、飲まないのかと思えば・・・飲むんだそうな。

「貴島さん、何ですか、ここわ!。堅田や京都ではいい天気なのに、20分車で走れば、何ですか、ここわ!、雪国じゃないですか!。青森は一時間走っても、二時間走っても、どこでも雪ですよ、何ですか、ここわ!!!」

「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」という、有名な小説の始まりと同じ、ここは花折トンネルを境に世界が変わる。

 

以前、うちを訪問し「天涯無一物、無印良品。こんなに何もなくても生きていけるんだ。人生観が変わった」と言った友達がいた。奈良の仏像や国宝の多さにビックリしたこの青森の友達は、うちへの訪問で又違う意味でビックリさせられた事だろう。

いつもリンゴを送ってくれる友達の為にりんごのお菓子を焼いておいた。

 

そのお菓子を食べ、晩ご飯を食べ、ニッカウヰスキーを飲み、沢山話し、まだ話したりない。そして、客室がないのでうちから車で20分、ここよりまだ雪の多い宿泊施設まで夫と友達は移動した。

 

山奥の我が小屋、人気のない冷えきった宿泊施設、特別なごちそうもしなかった。

でも、私は本当に楽しかった。私達が楽しければ、きっと友達も楽しかっただろうと思う。

 

日本は小さな国だ。又、会えるだろう。重い腰を上げさえすれば。