私の小屋の周りには、春には春の,夏には夏の、そして、秋には秋の花が咲く。
春に初めて花を見つけた時、冬のモノトーンの景色を見慣れた目には,淡いピンク色の花でさえもとても色鮮やかに感じる。
今,秋の始まりに、ススキや背の低いネコジャラシの群生が光りながら風に揺れ、イヌタデやミゾソバがピンクの淡い麻布をふんわり広げたように咲いている。
その中で一際背が高く背筋を伸ばした姿で川原や土手に咲くシシウドの花に、私はここで始めて出会った。
でも花瓶に挿して眺めてはいけない。凛とした姿からは思いもしない水を腐らせた様な匂い、茎から流れるドロドロの液体。
「ごめん、秘密をばらしてしまったね」
山の中、道路脇の斜面。どこにでも咲いているアケボノソウ。
山野草の中でも、優等生で知的な風情を醸し出している花だ。白のブラウスを着て,淡い緑のスカートをはいている。決して大きな声で笑ったりしない。
山の斜面や道路脇のどこにでも咲いている。何時も下を向き,決して上を向いたりしない。初夏に咲く薊は上を向き蝶を呼んでいる。しっかり者の薊と違い,カガノアザミは細い茎を風が吹けばユラユラ揺らす。花が終われば次の春、淡い緑のピンポン玉の様な袋を作る。うつむき加減で気が弱そうなのに、ちょっと油断出来ない。「心理学者の様な事を言うなって?」
長芋に芽が出たので植えておいたら,蔓が伸びムカゴまで出来た。ムカゴご飯にする程は採れない。ただ、今はこの生命力に感心している。
山のあちこちでもムカゴは採れる。その前を通っても,今日は袋を持っていない、今日は急いでいる等々の理由をつけては素通りしている。
そんなに食べたいとも思わないのだろう。きっと。