裏の川に沿って高くなり低くなり、あるいは旋回し、クマタカが飛ぶ。ここ1年程の事だ。何時も同じ場所から飛び立つので、たぶんあそこが巣なんだろう。杉の葉がこんもり茂ったうちの小屋から100m程の川向いである。平良の食物連鎖のトップにいるかのように杉の木のてっぺんでよく見張りをする。
最近うちに出入りする野うさぎ。親指小僧のようなネズミ。群れをなして飛ぶ様々な野鳥達。そして蛇までがクマタカのごちそうだ。
今の季節になると小屋のあちこち、ストーブの煙突、屋根、あらゆるところに女郎蜘蛛が大きな巣を張る。そしてじっと辛抱強く獲物を待っている。今まで呑気に飛び回っていた虫達は、運悪くこの網にかかり終末を迎える。
淡い緑のワキグロサツマノミダマシ。小さな蜘蛛。木の葉の上で身動きもせず。「昼寝をするなりなんなりと。どうぞお好きに」
人間が賢いなんて思うのは思い違いだ。
どうだ、このがんばりは。尺取り虫の見事な擬態。私達にはとても真似の出来ない特殊能力。しげしげと見入ってしまった。
クマタカから尺取り虫まで。私のまわりには顔見知りがいっぱいだ。
挨拶はまだした事がない。