仁寺洞(インサドン)を後にして、両班(ヤンバン)の家が何軒か集められている「南山韓屋村(ナムサンハノクマウル」」に行く。
かつての日本の家がそうであったように、朝鮮半島の家も木と紙で出来ている。日本の家が夏を基準に建てられたのに比べ、ここはいかに冬を暖かく過すかを考えて建てられた。建物を目の当たりにして初めて分かる。
内側と外側に開けられる、厚い手漉きの韓紙が張られた2枚の障子。すきま風も防いだに違いない。この韓紙の素朴で暖かな風合いがとても好きだ。
そして有名な床暖房、オンドル。どのようにして床を暖めるのか?ずっと不思議だった。
この両班の家は、台所のかまどの焚き口がオンドルの焚き口も兼ねていた。床下を黒い瓦に似たレンガで囲み、所々煙の排出する3個の穴をもうけてある。そして裏庭あたりに、やはり黒い瓦状のレンガで作った低い塔があり、ここからも煙が出る様になっている。
私腹を肥やした両班はドンドンと薪を燃やし、清貧に甘んじた両班は細々と薪を燃やす。いくら床が暖かくても、厳しい朝鮮半島の冬はさぞや寒かったに違いない。
正面に門、マダンと呼ばれる中庭をコの字形に囲んだ建物。この様式が韓国の建築の基本の様に思う。
李王朝の時代にはまだ唐辛子は伝わってなかった。チャングムが王様のために作った料理は、今の韓国の味とは随分違っていたのだろう。
その当時、味噌、醤油、酒、発酵食品等を保存していたのがこの大きなカメ達だ。今でもこれらのカメは現役で、キムチを漬け保存しているのを映画等で見たことがある。このカメと非常によく似たカメがずらーっと並んだ「壮観」な光景を写真で見た事がある。鹿児島の黒酢工場の写真である。きっと朝鮮半島から渡って来たのだろう。
韓国では、結婚式の前に記念の写真を撮る。それをぶ厚いアルバムにする。
その写真撮影の現場に出会った。韓服を着て写真を撮るには、この韓屋村は打ってつけだ。私がカメラを向けると、カメラマンが「どうぞ、どうぞ」と言う(多分・・・)。すると、花嫁、花婿もこちらを向きニッコリ。とても幸せな時だ。
南山韓屋村の後は「宮廷料理」を「試み」、伝統芸能の踊り、古楽器、太鼓の演奏、パンソリ、踊りを見た。ソウルを旅する友達には是非見て欲しい。ユネスコの世界文化遺産にも登録されているこれらの伝統芸能は、完璧な演技、演奏で、見てこそ、その素晴らしさが感じられる。