ビン・ラディンを殺害し、それにより又、テロの連鎖に恐れながら生きて行かなくてはならない国、アメリカ。そして、誤解を恐れずに言うならば、自然災害によって余りにももろく崩れてしまった、豊かさを享受していた国、日本。
本当の「豊かさ」とは?、「幸福」とは?を思う時、30年程前に読んだ新聞の記事が何時も心に浮かぶ。
「まさに桃源郷だ」と書かれていたその記事は、ヒマラヤ山麓に位置し、インドと中国に挟まれた小国ブータンの紀行文だった。それ以来、ブータンの海外青年協力隊の滞在記や旅行記を数冊「ホー」とか「へー」とか言いながら読んだ。
面積は九州程、人口は70万にも満たない。国家財源の四分の一は海外からの援助。JAICAや海外青年協力隊ではおなじみの国だ。ヒマラヤの地形を生かした水力発電の電力輸出以外は、大した産業もない。殆どの国民が農民で、まさに自給自足の生活。
プラスチック製品の輸入、使用を制限し、開発にも非常に慎重だ。開発によって得られる利益よりも、国の保全と国民の健康を考える。たった一校の大学までの授業料は無料。
GNIやGDPだけで計ればとても貧乏な国なのに、名君の誉高い前国王がGNH(国民総幸福量)を掲げ、「心は錦」の質の高い生活が営まれているように思う。
この様に優等生で平和な小国ブータンも、大国同様にチベット族とネパール族の深刻な民族問題を抱えている。
私がとてもエキゾチックに感じる民族衣装着用も「国家統合政策」の一環だ。ネパール族はこれを着る事は許されていない。
私のまわりではIHキッチンや床暖房で当たり前の様に電気を消費している人達が少なくない。それが当たり前だと思わないで欲しい。地球温暖化への警鐘が鳴らされて以来、スローライフやロハスという言葉をよく耳にする様になった。決してあってはならない災害だったが、これを機に、楽な生活で五感が鈍る様な生活を考える直してはどうだろうか。
ブータンの様にまでとは思わない。しかし、床が冷たければ、せめて厚めの靴下を重ねる位は出来るだろう。
お金で何でも買えるのも豊かさの証しだが、質素で堅実な生活は揺るぎのない「豊かさ」だと思う。