山の中に住んでいると、街では経験しない動物の死と向き合わなくてはならない。
冬は狩猟の季節。遠く、近く、猟犬のせわしい鳴き声が聞こえる。真っ白な雪を血で赤く染めて、深い雪に脚を取られながら猟犬から逃げる鹿。
道の脇に捨てられている罠にかかって死んだ狐。顔をこちらに向け開いた目は遠くを見ている。それは晩年の私の母の目だ。
屋根から落ちた雪の間に見える淡い黄色のストライプの羽を持った小鳥。屋根から落ちる雪のすぐ下を飛んでいたのかも知れない。
バケツの水の中で水死していた親指程の小さなネズミ。
裏を流れる川向こうの林の中を、子鹿が深い雪に脚を一歩一歩埋めながら歩く。何時猟犬の声が聞こえて来るのかヒヤヒヤしながら私はそれを見ている。
うちの小屋のすぐ近くに出没するイタチ。何時でも忙しそうに跳ねながら走る。
深くて白い雪の中を行く動物達を見ていると、生きるも死ぬもほんの一瞬の運だと思う。