「こんにちわー。よろしく御願いします」
9人の小学生が自己紹介の紙とサルビアの苗を持ってやって来たのが7月の初めだった。
私の住む地域に小学校は一校。以前はウチの集落平良にもあった。今は廃校になり、時々村人の思い出話に当時の生徒達の声が聞こえる。
そのたった一校の小学校,朽木西小学校は去年より人数が増え3家族、9人の生徒になった。
去年までは生徒より先生の方が多かった。
車3台から降り立った先生達、生徒達は皆ニコニコ嬉しそうで私達を見つめている。どう挨拶をしていいのか、私は困った。
一人々が名前を言い「よろしく御願いします」と言う。
「僕たちが育てたサルビアの苗です」と言って苗を4個くれた。
そして200メートル程離れたお隣へ又車でダーッと移動して行った。
お隣は土の中から壷が出て来たお宅である。突然の来客にビックリしたお隣は子供達を座敷に上げ壷を見せた。
2年前に奥さんを亡くされた80過ぎの男性のお宅では、昔のここらの話をされたとか。
こうやって一軒,一軒村の家を廻るのは全部新住民の子供達だ。山の中の清流沿いの,人より鹿や猪、猿達の方が多いこの村の小学校で、街の学校では得る事が出来ない学園生活を送っている。街の子供達が塾に行く夕方,ここでは薪で風呂を沸かしている子供もいる。受験だ,塾だと神経質になっている街の親達はこんな子供達の生活をどう思うだろうか?
私は思う。どちらでもいいじゃないか。だって、「20歳(はたち)過ぎればただの人」。そんなに変わりのない大人になっているだろう。昔の人は上手い事を言う。
もし、山の小学校で育った子供達が街の子供と違うとしたら、こんな山奥で子供を育てようと思った親の思想、家庭環境によるものだと私は思う。
5センチ程だったサルビアの苗も今は鮮やかな赤い花を付けた。今年の夏は特別に暑い。お盆が過ぎ、そして半月後、ススキが穂をのぞかせる頃も、まだサルビアの花は元気に咲き続けている事だろう。
夏も終盤に入ったのに暑さは衰えを見せない。しかし、夕方ふと空を見上げると羊雲が広がっている。
もう秋・・・なのかな?