村祭

平良の思子渕神社
平良の思子渕神社

思子渕(しこぶち)神社は私が住む平良を含む針畑郷に数社ある。

山から伐り出した木を針畑川に筏にして流し,最後は琵琶湖までたどり着く。そんな時代に筏師の安全を祈願して建てられたと言う,いかにも山の村の神社である。

 

屋台が出る訳でもなく,20人にも満たない村人達が集い、朽木村の名の由来になっている神主の朽木さんを招いてのお祭りだ。安倍晴明の様な装束の朽木さんの他に,もう一人村で毎年回り持ちの神主がいる。着慣れない神主の装束を着るのにも大騒ぎ。ああでもない、こうでもないとそれはおもしろい。山深い村の神社の緑に囲まれた小さな社は、村の人も何時建ったのかはよく分からない。

人力で造られた石の階段を上り,小さな社殿で神主の祝詞を聞き,お祓いを受け,最後はガランガランと鈴を鳴らしてお祈りをする。板の間での正座は私にとっては拷問にも等しい。しかし,村の人達は痛い,痛いと言いながらも,その間正座が出来る。

年に2回ある神社でのお祭りは皆が集って食事をする楽しい場でもある。以前は2回ともポットラックだったが,最近はその内1回は仕出しを利用するようになった。

始めてこの神社の祭りに招待して頂いた時は,お社での行事もさる事ながら村の奥さん達の料理の上手さに驚いた。大きな皿や重箱に盛られた鯖寿司、ネギと鯖で作ったぬた,たっぷりの煮しめ。子供の頃から母親が作るのを見て覚えた手慣れた料理は味も姿も美しい。何百年もこの地に住み続けている人達に混じり,数年前に引っ越して来た私達。何の違和感もなく笑ったり,食べたりしている。

 

日々それぞれが、それぞれの人生や思惑を持ち暮らしている。しかし、平和に暮らそうと思えば暮らせるのだと,少なくともこの場の光景を見ているとそう思う。

絵馬
絵馬