緑に埋まる村

川向こうのナラ林
川向こうのナラ林

気まぐれな気候が過ぎ去ると,ずっと頭を下げ我慢をしていた回りの木々達はいっせいに芽吹きを始めた。

朝に固く葉を閉じていた木々達は夕方には枝の色を変えている。それはまるでスーラの絵の点描の様にキラキラと輝いている。刻々と色や形を変えて行くのが今の新緑の山だ。ひと時も見逃してはならないと,この季節の私は心騒がしい。

晩秋から冬,雪に埋もれる真冬が季節の中で最も好きである。木々は葉を落とし,冷たい風が吹き、ある朝目が覚めると、辺り一面雪で覆われている。その様な雪の季節の始まりは,静かな日々の始まりをも知らせる。

しかし、この心騒がしい春から初夏にかけての活力に満ち満ちたこの季節は全てが喜びに満ちている。野の花が次から次へと絶える事なく咲き続け,鶯は鳴き,川の流れまでも軽やかだ。

むくむくと動いている様な緑に囲まれた村は、まるで緑に埋まっている様に見える。歩く時も車で走る時も,回りを見回さずにはいられない今の季節だ。

テレビや新聞では心穏やかでないニュースが日々伝えられる。怒りを覚えたり,悲しみを感じたりする時、これらの出来事も何時かは過ぎ去るだろうと思う事にしている。楽観的だと自分でも思うけれども、回りの自然を見ていると「時の流れ」を信じたくなる。

気まぐれな気候を只耐えて,新緑の葉を開かせた木々や,地を覆っている野の花々がそれを私に話してくれる。

満開、ウマノアシガタ
満開、ウマノアシガタ

山ウド。てんぷらと木の芽和え
山ウド。てんぷらと木の芽和え