日本列島に冷たい雨やみぞれや雪が降り、咲き始めた桜も息をひそめている。朽木の平良にもみぞれや雪が積もり、まだまだストーブに薪をくべなければならない。
そんな冷たい空気の今日、瀬戸内の播磨灘の海を見に行った。ここもやはり風は冷たく、フリースの上にウインドブレーカーを重ねて着る。しかし暖かいバスの中から見る播磨灘は、薄い霞の向こうにゆったりと広がっていた。子供の頃から汽車の窓から見え隠れする瀬戸内の海が好きだった。今日も海が見えると瞬きもせずに見入ってしまった。体の芯まで染まりそうな深い緑の山の村も好きだが、この広がりのある海には懐かしさを感じる。
まだ春は少し先の朽木と違い、この瀬戸内の山には山桜が咲き、タンポポも太陽に顔を向けている。左に海、右に山を眺めながら下り、途中の家の庭々にも春の花が満開で、朽木の山ではまだ固い蕾のアケビの花もこぼれそうに咲いていた。
暗くなってから帰り着いた村は冷たい雨が降り、花が咲くにはもう少し待たなくてはならない。
花は必ず咲く。自然はめったに嘘をつかない。