マグロも鯨も

グリニッチビレッジの魚屋
グリニッチビレッジの魚屋

毎日クロマグロの商業取引禁止のニュースで騒がしい。インタビューに答えている庶民は「寂しいですねえ、マグロが食べられなくなったら」と言っている。この映像を見れば、まるで全日本人がマグロについて嘆いている様に見える。マスメディアには気をつけなければならない。

寿司、刺身好きだが、マグロが食べられなくなっても、タコもエビもヒラメもある。どっちみち庶民の食べる寿司はテイクアウトか回転寿し。マグロといっても薄い、薄いマグロだ。何が「寂しいですねえ、伝統食ですから」だ、と又私は14インチのテレビの前で怒っている。

スーパーマーケットには食物が溢れている。もし私の前からこれらの食物が何らかの理由でなくなる事があれば、生命維持の為に私は何でも食べるだろう。アンデス山中に不時着した飛行機の乗客の様に。

しかし、今はマグロがなくても、鯨がなくても、フォアグラやキャビアがなくても、私は一向に構わない。食べ物に関しても、人間はもう少し謙虚になれないものだろうか。


寿司、マグロと言えば、思わず笑ってしまう旅の思い出がある。

ニューヨークのホテルのロビーで私はイライラしながら空港行きのシャトルバスを待っていた。ニューヨークのタクシーのいい話を余り聞かない。だからシャトルバスを予約したのに、30分オーバーしても来ない。仕方がないと道路に出てタクシーを停めた。停まったタクシーから現れたドライバーは大男の黒人だった。シャトルバスがその時に来たが、もう遅い。荷物をトランクに納めていざ出発。ドライバーに遠回りされては大変だ。私はドライバーにフェイントをかけた。「ニューヨークには何回も来てるが、昨日始めてエンパイアーステイトビルディングの展望台に行った。あなたは行きましたか?」と話しかけた。何回も来ていない。たったの2回なのに。意外にもドライバー君はとてもおしゃべりだった。私が日本人だと分かると「寿司が大好き。日本は海にかこまれているから寿司はおいしいだろう」と聞く。日本が中国とくっついていると思うアメリカ人が多い中で、「海に囲まれている」と言う。驚いた。ビックリついでに私は「日本の寿司は皆輸入の冷凍だ。マグロはボストンの港から日本に輸出されてる」といい加減な事を言った。言いながら家族や友達に「日本人は輸入の冷凍魚の寿司を食べてる」等と話すんだろうなと吹き出しそうになった。「カリブ海のどこかの国(?)から移民で来た時に英語のクラスに行った。しかし英語は習う物ではない、何を話すかだ」と、又私をビックリさせた。

ホテルから30分。予定の時刻に空港についた。とても楽しい30分のドライブ。

チップを大いにはずんだ。

グリニッチビレッジの魚屋、もう一軒。
グリニッチビレッジの魚屋、もう一軒。

さんまの辛煮
さんまの辛煮