地玉子

朽木の地玉子
朽木の地玉子

私が子供の頃、玉子は非常に高かったように思う。紙のレースに縁取られたボール箱のもみ殻の中に大事そうに詰められ、病気の見舞いの定番だった。今や玉子はスーパーで山積みにされ、安売りの目玉商品である。安くて、高カロリーで、私達に愛され続けられているのは今も昔も変わらない。しかし、この安さを支えているのは玉子工場と化した養鶏場だ。身動き出来ないケージの中で餌をついばみ、玉子を産み続け、そして玉子を産む量が落ちるとおしまい。青い草や土の感触、ミミズも知らないにわとり達。スーパーで玉子の山を見るたびに、思わなくてもいいのにこのシーンが浮かんでくる。菜食主義者に成る程の思想も持たない私は、可愛い牛や豚の目を後ろめたく感じながら、日々玉子や肉を食べている。

朽木では放し飼いの鶏の玉子を買う事が出来る。その玉子の殻は堅く、誰もが「玉子かけご飯が食べられる」と言う。炊きたてのご飯に玉子を割入れ醤油をかけただけなのに、日本人はどうしてこんなに玉子かけご飯が好きなんだろう。先祖からずっと食べ続けた味。郷愁と言うか、大げさに言うなら遺伝子が騒ぐのかも知れない。

 

私は今や贅沢になった地玉子で時々玉子かけご飯を食べる。そんなにおいしいとも思わないが、何故か満足する。

玉子かけご飯にいい器
玉子かけご飯にいい器

ポテト、ブロッコリーのチーズグラタン
ポテト、ブロッコリーのチーズグラタン