私は何時もカメラを持ち歩かない。珍しい草木や,印象に残った風景等に出会った時に少し後悔する。
去年、郵便局に行く途中にこの家の前を通った。夏とはまるで違う。静かにひっそりと,しかし、私が思わず車を止めてしばらく見入る程の個性的なたたずまい。そして,次に郵便局に行く時に私は忘れずにカメラを持った。
本に載る様な「どこかで見た事がある」様な山荘や家には私は魅力を感じない。。私が引っ張られる様にして車を止めたこの建物は、少しずつ必要に迫られて建てましていったという感じの、それぞれがおとなしいのだが,でも自己主張だけはしっかりとしている家である。
4年目の冬を今過しているが、どんな人が住んでいるのか私は知らない。30年程前に街から越して来た、私と同じ位の年の椎茸栽培をしている人だと村の人は言う。
この家の住人は,この建物と同じ様な人なんだろう。静かで、個性的で・・・。いや,意外とおしゃべりなのかも知れない。だってこの家はこんなにも私に向かって話してるではないか。
何時か会う機会があるかも知れないが,中には踏み込まず,挨拶だけはしたいと思う。