一週間余り私にまとわりついていた風邪が少し快方に向かったようで、鼻がとおり、喉の痛みがましになった。
私の母は風邪に限らずどんな病気の時でも、片栗粉をお湯で練った甘い「カタクリ」を子供に与えた。
その話を義母と夫にすると、そんな事はした事がないと言う。どこの家でも病気の時には「カタクリ」を食べていると思っていた私は驚いた。夫は病気の時にでも普段と一緒で、ミルク紅茶等を飲んでいたらしい。
違う家庭環境で育ったのだから色々な事で違いがあるのは当たり前だとは分かっていても、あらゆる事で夫の家と私の家では違った。
私の母の料理は手早く、ゆっくりと煮るものでも強火でバーッと炊いた。夫の母は細かい所まで気を使い、おせち料理でも数の子のつかり具合からなますの味まで、実に細やかな気の使いようだった。
その料理を皆で囲む時、皆でおいしいと言って食べる。義母も料理にやりがいがあっただろう。
私の父は母の料理を決してほめなかった。そのせいで母は料理に楽しみを見いだせなかったのだと、大人になって私は思った。結果には必ず原因がある。
義母のつくったクッキーやケーキを夫はよく懐かしがる。そして、風邪をひいた時には、いつもと同じ様にミルク紅茶を飲んでいる。
そして私は、病気の時には母の「カタクリ」も、義母のミルク紅茶も、そのどちらも踏襲せず、絞ったレモンに蜂蜜をたっぷりの熱々のホットレモンを飲んでいる。