村の鍛冶屋さんで偶然に見つけた時計型ストーブ。
何とか3年は保つだろうと言われながら、4回目の冬を迎え今だ健在である。安価で軽便で、おしゃれでない所がうちにはぴったりだ。
2年前、鉄の値段が上がると鉄工所勤めの人が言うので、それなら今の内にと鋳物ストーブを購入した。
時計型はどっちみち仮のストーブだ、鋳物は何と言ってもどっしりと、安物っぽくないのがいいと私は思った。
70キロのストーブは雪の中をトラックで運ばれ、夫はヨイショ、ヨイショと据え付けた。二人してわくわくしながら火を点け「さあ、暖かいぞ」とストーブの前で待った。しかし、何か様子が違う・・・暖かくない・・・やかんの水が蒸気機関車のようにシュッポ、シュッポと言って沸いてこない。「鋳物ストーブは暖かくなるのに時間がかかるので、1時間は灯油ストーブをつけて暖かくなるのを待ちます」と以前ある人が言っていたのを思い出した。
威勢良く湯も沸かず、鍋をおいて大根を炊く事も出来ない。2日我慢してこの鋳物ストーブを首にした。
朝起きて火を点ければ15分で紅茶の為のお湯が沸き、小屋の中はすでに暖かい。昼に野菜と肉を入れた鍋を置いておけば夕食時にはシチューが出来ている。
ここらでは干し柿は表に吊るすとカビが生える。ストーブの上に吊るしておくと一週間もすれば濃厚な甘みの美味しい干し柿が出来、大根を沢山頂いた時は、指位の大きさに切り,糸を通して吊るすと滋味豊かな干し大根が簡単に出来る。
雪の日は洗濯ものもストーブの上に吊るす。布団もストーブの回りに広げて干す。どちらもよく乾いて冬の生活を快適にしてくれる。
夜、寝ている間も寒くて目が覚めたという事がない。街にいた時と同じ布団を使っているのにもかかわらず。
こんなに偉い!時計型ストーブなのに一つ、二つの欠点はある。目に見えない程の煙が小屋の中の化学製品に黒い静電気を付着させる。テレビの画面やパソコン、プリンター、電気冷蔵庫等、毎日ゴシゴシ拭いている。又、小屋の中の物全てに、薫製の様な匂いしみついて、私はその匂いが沁み付いた服を着て人前に出るのが少し気が引ける。
何時穴があいても大丈夫な様に予備のストーブを買ってあるが、今年の冬は今ので暖がとれそうだ。10月半ばから4月一杯、本当に良く働くストーブ。エライ!