私達二人は甘党である。手元にお酒の常備はないが、甘いものは常になければならない。どこの居酒屋がいいとかという話はうちではしない。しかし、どこそこのケーキやチョコレートパフェが好きだ、あそこのパンがおいしい、この間買ったジャムは値段の割には非常にリッチであるとかが日常会話に頻繁に出て来る。だから家でお菓子を焼く手間はいとわない。
その私は30数年ケーキを焼き続けているが、「ケーキ作りはフルーツケーキに始まり、フルーツケーキに終わる」と最近つくづく思う。デコレーションも何もない、見た目はいたってシンプル。ラム酒に長い間漬けたレーズンが、焼き上げた数日後にケーキにしっとりと深い味わいを与える。温かいミルク紅茶と共に食べる薄めにスライスしたフルーツケーキは本当に美味しい。
ケーキを焼き始めた頃は次から次へと様々なレシピを「制覇」していった。デコレーションしたもの、バタークリームを塗ったもの、見た目はシンプルなのにやたらと手のかかったチョコレートケーキのザッハトルテ等。
外見は質素で、味わい深い。アップルパイとフルーツケーキは今の所家で焼いたものが一番おいしいと私は思っている。