空色の空にバニラアイスクリームの様な月が出ている。銀のスプーンで一口すくって食べてみたい。淡くはかない存在感である。
月から見たこの”水の惑星”、地球の何と言う自己主張の強さ。白と濃紺のマーブル模様で黒い宇宙にくっきりと浮かんでいる。
生物がまだ見つかっていない月には、人間はおろか植物も存在しない。無機質の世界である。映画「2001年宇宙の旅」のプロローグに、類人猿が骨を空高く放り上げる今の地球を暗示する象徴的なシーンがある。昔見た映画で記憶が曖昧なのだが、その時私は、類人猿が骨という武器を持った時に、争うという事を知ったのだと思った。それから何万年、何億年たったのだろう。人間はこの美しい”水の惑星”の上で戦いを止めた時がない。
人間が存在しない月は戦争もない。
のんびり、ぽっかりとはかなげに空に浮かぶ月は、私がバニラアイスクリームを思っているなんて知らない。