十代の頃,どこの家にでも世界文学全集があった様な気がする。灰緑色のハードカバーは今でも目に浮かぶ。次から次へと読んでいったが殆ど何も覚えていない。
木々は黒く,世界がモノトーンで沈黙し、そして銀灰色の空にミルク色の太陽が在る日、私は決まって「魔の山」を思い出す。断片的にしか思い出せないストーリー。しかし長い間ずっと私の中に在り続けているこの銀灰色の「魔の山」の印象。
朽木,特に針畑川に沿った山奥のここら辺りは、時々「魔の山」現象が現れる。山奥の村で、十代の頃に読んだ本を思い出させるミルク色の太陽である。