山も道から見える林の中も少しずつ色づき始めた。サンシュユかなと思う赤い実は食べるとリンゴの味がする。
この時季はひっそりと、なりを潜めていたカメムシが、表も小屋の中も飛び回る。始めての年はハサミでつまんでは窓やドアから表に放り出していた。しかし,そんな事ではとても追いつかない。ペットボトルにオイルを入れその中にカメムシを貯め込む人もいるが,幼少の頃に漫画版イソップ物語を読んだ私は、動物を擬人化する癖がつき「オイルカメムシ」をつくる気にはなれない。表に放り出しても、放り出してもきりがない。シジフォス状態である。
しかし考えてみれば,スズメバチの様に刺すわけでもない、マムシの様に毒をもっているわけでもなく、ただ悪臭を放つだけだ。知らん顔をしてればいい。その内後1週間もすれば,どこかに又潜り込んでしまう。
季節毎に律儀に出て来る虫達。夏の間何ヶ月も夕方になれば出て来ては私を悩ますブトや、怖い、恐いスズメバチもいるが、次から次へと現れる殆どの虫達はせかせか働いては数週間で姿を消す。「沈黙の春」からは程遠い山里の喧噪である。